足立古書堂 謎目録
彼の唇が震えている。

怒りゆえか、恐怖ゆえか。

高木は、『彼女』が誰なのか理解できずにいた。

「わかったかな?」

足立の目が細まった。

蛇に睨まれて、蛙はこくこくと頷くしかない。

それでやっと足立が身を引いて、男は逃げるように──というか逃げていった。

「ふう。これで一件落着、だね」

「……足立」

ただ成り行きを傍観するしかなかった高木は言う。

「説明しやがれ」
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