この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
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 キルシュライト王国首都キルシュ。その中心にそびえ立つ王城の来賓室の一室で、少女は顔を悔しげに歪めた。


「ありえないわ!!わたくしとアリサを会わせないなんて、ありえないわ!!……あの男、一体何を考えているのかしら?!」


 淑女にあるまじき激情を見せ、ティーナは思わず爪を噛みたくなった。――だが、理性で口元まで来た指先を膝の上に戻す。


「まあ、キルシュライト王国の社交界でも元々必要最低限しか出席していなかったようだし……、あまり彼女を表には出していないようだよね」

「本当に憎い男だわ!!すんなりわたくしの要求を通して下さるとは思わなかったけれど、もう二年以上も会っていないというのに!!アリサの祖国のアルヴォネン王太子夫妻に会わせないなんて、そんな事ったらないわ!!」

「うん、そうだね」
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