この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 ルーカスに釣られて、ティーナもクスクスと楽しそうに声を上げる。嬉しくて仕方がないというように。


「明日から三日、毎晩ある歓迎のパーティーも乗り越えられそうだわ」

「よく言うよ。意外とパーティーは楽しんでいるくせに」

「ふふっ。社交界では色々な情報が集まるからだわ。それにね、お友達が悪く言われるのは嫌だけれど、裏で他人が他人の悪い噂を言っているの、とても滑稽で見苦しいけれど、退屈はしないんですもの」

「本当、いい性格してるよね」


 少し呆れた声音で肩を竦めるルーカスは、テーブルに出されていた手付かずのカップに口を付ける。ティーナは焼き菓子を一つ摘んで、「だって、」と綿菓子のような甘い声を出した。


「せっかくわたくし達がアリサに修道院行きをプレゼントしたのに、それを潰してくれたあの男の事がどうしても許せないんだもの」
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