この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 吐き気と戦いながら、可愛さに悶えていた。

 イーナさん達は私達を二人にしてくれて、ローちゃんは部屋のソファーで仰向けになって寝ている。

 さっき「かーたま」って呼んでくれたけど、まだ言い難いみたいで、「あーたま」になっている。それも可愛い。

 これは親バカ重症かもしれない……。


「うへへ、母様とねんねしよっか〜」

「あいっ!」


 ベッドの中で擦り寄ってきたアーベルくんの背中をトントンと規則正しく叩きながら、瞼を下ろす。ちょっとだけ高い、赤ちゃんの体温が心地よくて微睡んでいた。


「あーたま、あーたま」


 だけどアーベルくんに邪魔をされる。ぺちぺちと頬を叩かれて、私は上体を起こす。


「どうしたの?」


 今にも泣きだす寸前の表情をしているアーベルくんに、私は顔を曇らせた。


「や」

「や?何が嫌なの?」
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