この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 耳を塞いでも、壊れた機械のように流れ続けるざわめきに、呑まれそうになる。


 ――うぅ……。ゼルマ様とイーナ様はなんとか守り通せた。けど、奥方様はどうなったんだろう?いた……痛い。けど、私の足、動いてよ!!


 ヴァーレリーちゃんの声が聞こえる。酷く苦しそうにしていた。悔しさを直接感じる。


 ――ローデリヒ・アロイス・キルシュライトを僕は絶対に許さない。アリサ、君を必ず助けに行くから。


 知らない若い男の人の声がする。
 確実に私に向けて言ったであろうそれに、困惑する。

 多分王城のある方から、私に語りかけてきた。

 正義感と親愛と義務感と、ほんの少量の哀れみ。やるせなさすら感じたその感情は、ひたすら私の為を考えてくれているかのようだった。

 一体、誰なんだろう。何故ローデリヒさんを許せないんだろう。


 ――アリサ!!

「何があった?!」
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