この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
囚われのお姫様(他)
「……うっ、駄目だわ……。転移魔法酔いしてしまったわ。何度やっても慣れないわ……」
「……まあ、転移魔法は反動が大きいからね。初めて行った場所からの転移は特に」
ソファーでしどけなく寝転ぶ少女は、手で口元をおさえる。妖精のような顔は、真っ青に染まっていた。
「そして行ったことない場所には行けないとか、一人しか移動出来ない、なんて面倒な縛りがあるのよ!」
憤慨する少女に構わず、青年は遠眼鏡を王城の南部に向ける。特別な遠眼鏡は、部屋の壁を透明化し、目当ての場所をはっきりと映し出していた。
分厚く、高さも有る白亜の塀。一貴族の邸宅のような雰囲気の屋敷だったが、ティーナが散々暴れたせいで、今はかなり損壊している。
塀は屋敷の周りを囲み、外からも中からも見えなくなっているような造りだった。
可哀想に、とルーカスの心は傷んだ。
王太子妃ならば、本来は王城に住むべきだ。というか、本来は王城が居住地だ。側室ですら、 王城の後宮に入るのに。
ローデリヒには側室はいない。愛人もいると聞いた事はない。
ルーカス自身も、側室はしばらく娶るつもりもないし、何より結婚したばかりだ。子供ができれば側室は不要と言ってもいい。
「……まあ、転移魔法は反動が大きいからね。初めて行った場所からの転移は特に」
ソファーでしどけなく寝転ぶ少女は、手で口元をおさえる。妖精のような顔は、真っ青に染まっていた。
「そして行ったことない場所には行けないとか、一人しか移動出来ない、なんて面倒な縛りがあるのよ!」
憤慨する少女に構わず、青年は遠眼鏡を王城の南部に向ける。特別な遠眼鏡は、部屋の壁を透明化し、目当ての場所をはっきりと映し出していた。
分厚く、高さも有る白亜の塀。一貴族の邸宅のような雰囲気の屋敷だったが、ティーナが散々暴れたせいで、今はかなり損壊している。
塀は屋敷の周りを囲み、外からも中からも見えなくなっているような造りだった。
可哀想に、とルーカスの心は傷んだ。
王太子妃ならば、本来は王城に住むべきだ。というか、本来は王城が居住地だ。側室ですら、 王城の後宮に入るのに。
ローデリヒには側室はいない。愛人もいると聞いた事はない。
ルーカス自身も、側室はしばらく娶るつもりもないし、何より結婚したばかりだ。子供ができれば側室は不要と言ってもいい。