この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 慣れたように裏口……と言っても、大きなマンションのエントランスレベルで大きい場所を通り抜けるローデリヒさん。


「大丈夫ですよ。仕方ないですもんね」


 お屋敷ほぼほぼ半壊したようなものだし……、本当に死人でなくてよかったよ……。

 ローデリヒさんに続いて城の中に入ると、どうやらそこは教会みたいな場所らしく、前方の中央部に祭壇が置かれ、参列席が並んでいる。
 天井までがかなり高く、天井にはフレスコ画って言うんだっけ?なんかすごい大きな絵が描かれている。

 ステンドグラスから差し込む光が祭壇を照らしていた。
 壁や柱には芸術を感じさせるような、何やら細かい彫刻等がされている。

 残念ながら、芸術センスゼロの私には何が何だか分からないけど。

 口をポカンと開けて、まるで地方から上京してきたお上りさんみたいに周囲を眺める私。ローデリヒさんはそんな私の様子にちょっと目をみはった。


「珍しいか?」

「そうですね……、こういう場所には来ませんから……」


 むしろ観光地って感じがする。
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