この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「まあ、少し経てば慣れるはずだ。貴女も短い間だが、王城に住んでいたからな」


 え、住んでた?これが王族の居城?これが家の一部なの?
 スケールが違いすぎてもう白目剥きそう。

 その後、シャンデリアが並ぶ長い廊下とか、金、銀、宝石が散りばめられた柱とか、天井一面フレスコ画の場所とか通り抜けて、なんとか目的地まで来た時は、すっかり疲れきっていた。

 豪華すぎて、庶民にはカルチャーショックが強すぎる。

 ぐでん、と軟体動物のようにソファーにへたり込む私に、ローデリヒさんは眉を下げた。


「すまない。まだ体調が悪いのに無理をさせたな……。一応近道を使ってきたのだが……」


 あれで近道……?
 移動だけで20分は掛かってると思う。

 オマケにすれ違う使用人の人達が廊下の端に寄って、私達が通り過ぎるまでみんな深々と礼をしているのだ。

 本当に実感が今まで湧かなかったけど、ローデリヒさんそういえば王太子様だったんだよね……。
 本当に実感湧かなくて、親バカな人くらいの感覚でいたんだけど。

 あれ、それならイーナさんにちょっかいかけまくっている、犯罪っぽい国王様ってもっと凄い人なんじゃ……?

 正しい認識に気付きそうになった時、ノックの音無しで扉が開く。
 全員そちらの方へと視線が集まった。
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