この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「ローデリヒ!何やら大変な事になったらしいのう!アリサも気を落とすでないぞ!皆が治癒魔法で治る怪我で良かったわい!事後処理が大変そうだから、ワシがアーベルの面倒を見てやるからな!イーナ、お主も来るのだ」


 オブラートに包みまくった上でのぽっちゃり系の中年男性――国王様は得意気にそう言った後、ひったくるようにローデリヒさんの手元からアーベルくんを取った。
 そして、器用にアーベルくんを片手で抱きながら、もう片手でイーナさんの腰を抱く。

 流れるような鮮やかな手つきに、一同唖然とする他なかった。


「ちょっ?!父上何を……?!」

「子守りはこの爺に任せよ!フハハハハ……イテッ」


 慌てて立ち上がるローデリヒさんに、国王様は高笑いしてながら立ち去ろうとしていたけど、アーベルくんに髭を引っ張られていた。


「ゼルマもアーベルを見ていてくれ」

「はい」


 ニコニコと穏やかに微笑みながら、ゼルマさんは国王様達の後を追う。やっぱりあの国王様凄い人じゃないんじゃないのか?ただのセクハラ親父なんじゃないか?なんて思ってるうちに、ローデリヒさんが人払いをした。

 室内には私とローデリヒさんだけが残った。
 さっきまでいたお屋敷の図書室より、ふかふかしているベルベット生地のソファーから身を起こす。

 絶好の機会だ。私はずっと疑問に思っていたのだ。

 多分碌でもない過去の記憶の中に、今回襲撃してきた少女との記憶があるのだろう。
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