この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
ローデリヒさんは顔を覆っていた手を下ろした。
もう彼の手は震えてはいなかった。海の色をした瞳は、静かに凪いでいる。
「だが、貴女が傷付く事は耐えられない。私も傍には出来るだけいるが、不測の事態が起きた時にはコイツを頼ってくれ」
ローデリヒさんが扉の方を向くと、何故かデブ猫ローちゃんが堂々と室内に入ってきた。そのままゆっくりとした足取りで、ローデリヒさんの座っているソファーの隣にお行儀よく飛び乗った。
「使い魔のローだ。猫の形をしているが、私と日頃から視界共有をしている。転移魔法はローの視界共有を利用して、行ったことのない場所へ転移出来ないというマイナス面を消しているんだ」
なんか良く分からない理論が出てきたけれど、取り敢えずローちゃんはただのデブ猫ではないという事か。思わずローちゃんをまじまじと見つめる。
どっからどう見てもデブ猫だ……。
「今晩パーティーに参加するには準備が足りないが、明日の夜参加出来るように今から手配しよう」
ローデリヒさんはゆっくりと立ち上がる。私も慌ててそれに倣った。
「あの、ありがとうございます!」
頭を下げると、ローデリヒさんは少しだけ口元に笑みを浮かべた。だけれど、寂しそうに目を細める。
「……いや、礼には及ばない」
軽く手を振って、彼は一度も振り返らずに外へ出て行った。
ローちゃんと二人で部屋に取り残される。ローちゃんと二人でいるけど、この場面はローデリヒさんも見てるって事か……不思議な感覚。
そして私は一つ、重大な事に気付いた。
「あ、あれ?ローちゃん前に脱衣場まで入ってきてなかった……?」
もう彼の手は震えてはいなかった。海の色をした瞳は、静かに凪いでいる。
「だが、貴女が傷付く事は耐えられない。私も傍には出来るだけいるが、不測の事態が起きた時にはコイツを頼ってくれ」
ローデリヒさんが扉の方を向くと、何故かデブ猫ローちゃんが堂々と室内に入ってきた。そのままゆっくりとした足取りで、ローデリヒさんの座っているソファーの隣にお行儀よく飛び乗った。
「使い魔のローだ。猫の形をしているが、私と日頃から視界共有をしている。転移魔法はローの視界共有を利用して、行ったことのない場所へ転移出来ないというマイナス面を消しているんだ」
なんか良く分からない理論が出てきたけれど、取り敢えずローちゃんはただのデブ猫ではないという事か。思わずローちゃんをまじまじと見つめる。
どっからどう見てもデブ猫だ……。
「今晩パーティーに参加するには準備が足りないが、明日の夜参加出来るように今から手配しよう」
ローデリヒさんはゆっくりと立ち上がる。私も慌ててそれに倣った。
「あの、ありがとうございます!」
頭を下げると、ローデリヒさんは少しだけ口元に笑みを浮かべた。だけれど、寂しそうに目を細める。
「……いや、礼には及ばない」
軽く手を振って、彼は一度も振り返らずに外へ出て行った。
ローちゃんと二人で部屋に取り残される。ローちゃんと二人でいるけど、この場面はローデリヒさんも見てるって事か……不思議な感覚。
そして私は一つ、重大な事に気付いた。
「あ、あれ?ローちゃん前に脱衣場まで入ってきてなかった……?」