この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
反抗とほんの少しの進歩。(他)
「アルヴォネンの王太子殿下ご夫妻の歓迎パーティーに奥方様が……?!」
栗色の瞳を大きく揺らして、ヴァーレリー・ハーゼナイは声を上げた。隣にいる男――イーヴォも驚いたように口を開ける。
キルシュライト王国首都キルシュ。その中心に位置する王城の一室――王太子の執務室で二人の男と、少女のような風貌をした侍従は顔を突き合わせていた。
「いやいやいや!奥方様元婚約者と会うの?!アルヴォネンで〝あんな事〟があったのに?!」
イーヴォの素っ頓狂な声にローデリヒは渋い顔をした。ローデリヒだって、本音は歓迎パーティーという公共の場に出したくはない。ましてやアリサの元婚約者が出席するパーティーだ。
アリサを元婚約者に会わせることに、自分自身気分が悪いのか。
アリサが過去の記憶を取り戻して、以前のように元気のない彼女に戻るのが嫌なのか。
両方なのかもしれない。どちらにしても、私情が入りまくっている事に変わりはない。
「私だって嫌だ。……だが、アリサが〝これから先〟を選択する事に必要だと」
「これから先を選択?どういった意味でしょうか?」
幾分か冷静になったヴァーレリーが訝しげな表情になる。考え込むように口元に手を当てるヴァーレリーに、ローデリヒは気まずそうに足を組んだ。
栗色の瞳を大きく揺らして、ヴァーレリー・ハーゼナイは声を上げた。隣にいる男――イーヴォも驚いたように口を開ける。
キルシュライト王国首都キルシュ。その中心に位置する王城の一室――王太子の執務室で二人の男と、少女のような風貌をした侍従は顔を突き合わせていた。
「いやいやいや!奥方様元婚約者と会うの?!アルヴォネンで〝あんな事〟があったのに?!」
イーヴォの素っ頓狂な声にローデリヒは渋い顔をした。ローデリヒだって、本音は歓迎パーティーという公共の場に出したくはない。ましてやアリサの元婚約者が出席するパーティーだ。
アリサを元婚約者に会わせることに、自分自身気分が悪いのか。
アリサが過去の記憶を取り戻して、以前のように元気のない彼女に戻るのが嫌なのか。
両方なのかもしれない。どちらにしても、私情が入りまくっている事に変わりはない。
「私だって嫌だ。……だが、アリサが〝これから先〟を選択する事に必要だと」
「これから先を選択?どういった意味でしょうか?」
幾分か冷静になったヴァーレリーが訝しげな表情になる。考え込むように口元に手を当てるヴァーレリーに、ローデリヒは気まずそうに足を組んだ。