この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】

その敵意はどうして?

 疲れた。疲労困憊だ。

 ドレスって着るの大変なんだね……。支度だけで随分と時間が掛かってしまった。

 でも、侍女さん達がかなり念入りに化粧をしてくれた。ブロンドの髪はキラキラの宝石と一緒に緩めに編んでくれて、華奢なティアラを着けている。

 耳元は大振りのダイアモンドのイヤリング、大きく開いた首元にもダイアモンドが連なった豪華なネックレス。ブレスレットもお揃いみたいで、普通に身に付けている色々な物の総額の事を考えると血の気が引く。

 決して派手ではない。むしろ大人しい色で上品に纏まっている。
 王太子妃の地位に相応しいお金の掛け方って感じだ。

 コルセットはお腹を締め付けないもので、胸の形を上手く整えてくれるものだった。胸が苦しいとかもない。

 下腹を撫でる。まだまだぺったんこ。
 本当に赤ちゃんが入っているのか分からない位だなあ。ローデリヒさんは顔を緩めて存在を確認していたけれど、私にはその方法は使えないんだよね。

 でもなんかいると思うと、下腹の辺りが少し温かくなるような感じがする。
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