この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 だ、駄目だ……!ローデリヒさんの髪の毛拭いた仲なのに、意識してしまうと普通に恥ずかしいんだってば!!

 お風呂で逆上せたみたいに顔に血が上る。ローデリヒさんだけが平然とした顔をしていた。


「お、男の人に褒められる事なんて無いですから!!照れてるだけです!!」

「そうなのか?……紳士たる者、女性を褒めるのは当たり前だと思っていたのだが……」

「……あっ、なるほど」


 困惑して首を捻ってローデリヒさんの言葉に脱力する。

 なるほど……女性を褒めるのは当たり前……。なんだ。お世辞か……。

 お世辞に本気になってしまった感じがして、違う意味で恥ずかしくなった。


「まあ、本当の事しか言っていないがな」


 ………………ん?

 手で熱くなった顔を扇いでいたけれど、ローデリヒさんの言葉に再び固まる羽目になった。
 けれど、私の思考が追いつかないうちに、彼は言葉を続けた。
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