この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 室内に入ってきたヴァーレリーちゃんは、「女です」と顔色を変えずに答えた。

 確かに凄い可愛いなって思ってたし……、今から思うとちゃん付け呼び大丈夫だったし、身長低いし、何となく察せる要素はあったかもしれない。でも、ローデリヒさんと同じ形の服着てたから、男の子だと思い込んでいた。


「ごめんなさい……。完全に男の子だと思ってた……」

「いえ。私も紛らわしい格好をしていますから、奥方様が勘違いされるのも仕方ないかと」


 真顔で私のフォローをしたヴァーレリーちゃんだったけど、それよりも表情を崩したのはローデリヒさんだった。


「は……?!男だと思っていたのか?!」

「殿下。そろそろお時間です」

「……分かった」


 何故か珍しくギョッとした顔で私を見たローデリヒさん。けれど、あっさりヴァーレリーちゃんに流される。


「……話が逸れたが、護衛はヴァーレリーが付くことになる。ヴァーレリーはそれなりに剣の腕が立つ。男が入れない場所にも連れて行けるから、私が貴女の傍に居れない時があればヴァーレリーを頼れ」

「分かりました」
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