この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 私の知らないうちに、トピアス・サロライネンが王城から消えてしまった頃には、すっかりおじ様は内心怯えきってしまっていたのだから。


 人の心は読めない。
 普通の人間だったら当たり前。精神属性なんて魔法の属性を持つ人はほとんどいない。

 だからこそ、他人の一挙一動、他人と共に過ごす時間、離れている他人との定期的なやり取り等、様々な要因が重なって、人間関係を構築していくはずだ。能力が分かる前の私もそうしてきた。

 きっと私は知らない、おじ様とトピアス・サロライネンの信頼関係があったはずだ。どの様にして出来たのかも、どの位の年数を掛けたのかも私には分からない。

 少なくともトピアス・サロライネンの件で、おじ様はすっかり怯えてしまった。きっとトピアス・サロライネンの事を少なからず信頼していたのだろうと思う。
 トピアス・サロライネン自身、かなり歴史の古い侯爵家の人間で、おじ様と同世代の人間だったから。

 それから間もなく、王国の魔法騎士団の偉い人が、私の魔法の属性は精神属性だろうという判断を下した。それとほぼ同時に、ルーカスとの婚約も決まってしまった。
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