この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 自分は嫌われていないか。
 自分は裏切られていないか。

 今まで長年信じ切っていたものが、あっさりと私の一言で崩れ去る。おじ様の恐怖は最もだった。
 長い時間をかけて自分の築いてきた信頼関係が、砂の城のように脆いものだと知ったおじ様は、すっかり人間不信になってしまった。

 おじ様には散々国内を連れ回された。
 ルーカスの婚約者という立場だから、見聞を広めているという理由を付ければ、皆が優秀な婚約者だと褒めてくれる。その裏に隠されていた本当の意味なんて、誰も知る由がなかった。

 何故なら私の能力は国民にも、貴族にも伏せられていた。知るのはたったの数人のみ。身内と各公爵家の当主だけ。

 おじ様は私の能力が悪用されることを恐れたのだ。
 自分が私の能力を使っているからこそ、その危険性について充分知識があったのだろう。

 私に魔法を学ばせる訳がなかった。
 私がおじ様を裏切らないように。

 状況は飼い殺し。
 でもリスクを考えれば、私を放置していられない。
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