この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 9歳の頃は能力もまだまだ未熟で、ありのまま聞いたことをおじ様に話していた。むしろ何も聞こえない日の方が多かった位だった。
 10歳の頃もまだ不完全で、聞こえてもハッキリと言葉とした言葉にならない時の方が多かった。サワサワと言の葉が、風に揺れる木々のように揺らいでいるだけ。

 11歳。徐々にハッキリと意味を持つ激情が私に届いていた。
 その頃には、もう今のようにずっと知らない人々の激情が絶えず耳の中に入ってくる状態。

 誰かの悪意も聞きたくないことも、全てを耳にしていた。寝る時も部屋自体は静まりかえっているはずなのに、どこからか知らない人の声が飛んでくる。
 私の疲労度はかなりのものになっていた。

 王城は特に人の出入りが激しかったので、何度も体調を崩した。夜も眠れない。昼も気が休まる事はない。
 何度も公爵家に帰って、元気になったら王城に呼び戻される。

 嫌だと駄々をこねたのは一度や二度ではない。
 けれど、両親がどんなに取りなそうとしても、おじ様は頑なに私を傍に置きたがった。両親も叛意を疑われる訳にはいかなかったので、最終的には折れてしまった。
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