この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
馬車の旅で少し疲れていたのだろう。私はなんだか外に出る気すら起きなくて、街で一番高級な宿の窓から、音を立てて降り続ける雨をぼんやりと眺めているだけだった。そんな私を慮ってか、侍女は紅茶と茶菓子を出してくれる。
それに手を付けながら、まだ昼のはずなのに鈍い色に染まった空を眺めていた。
「土砂崩れ?」
夕食時。侍女に持ってきてもらった質素な食事を食べながら、護衛騎士の一人が私に進路について説明してくれていた。
国王陛下御一行だ。普段は付き従う優秀な文官や武官が進路を決めてくれる。私が口を挟む事は無い。だから、食事中も基本的には騎士の説明を受けているだけのはずだった。
だけれど、不穏な響きに私は思わず問い返した。
「はい。実は予定していた進路の途中で土砂崩れが発生したようで、迂回する事になりました」
「そうなんだ……。土砂崩れで怪我人はいない?」
「はい。幸いにも人の通りがない時間帯と、人の住む場所ではなかったので怪我人はいないようです」
「それはよかった。……迂回したら予定よりどのくらい時間が掛かるの?」
「半日ほどかと」
それに手を付けながら、まだ昼のはずなのに鈍い色に染まった空を眺めていた。
「土砂崩れ?」
夕食時。侍女に持ってきてもらった質素な食事を食べながら、護衛騎士の一人が私に進路について説明してくれていた。
国王陛下御一行だ。普段は付き従う優秀な文官や武官が進路を決めてくれる。私が口を挟む事は無い。だから、食事中も基本的には騎士の説明を受けているだけのはずだった。
だけれど、不穏な響きに私は思わず問い返した。
「はい。実は予定していた進路の途中で土砂崩れが発生したようで、迂回する事になりました」
「そうなんだ……。土砂崩れで怪我人はいない?」
「はい。幸いにも人の通りがない時間帯と、人の住む場所ではなかったので怪我人はいないようです」
「それはよかった。……迂回したら予定よりどのくらい時間が掛かるの?」
「半日ほどかと」