この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
私はその指示に従って、侍女に連れ出された。開いた扉の方には、後ろの馬車で着いてきたはずの侍女達が濡れ鼠になりながら固まっていた。
馬車から降りたのか、馬車が壊されたのか。
馬車から降りた途端、足元が泥だらけになる。大粒の水滴が頭を濡らす。それはこめかみを伝って、頬に滑り落ちた。
「こちらです」
侍女に手を引かれて走り出す。
向かう先は薄暗い森の中。天候も相まって、一層不気味に見える。
「み、みんなは?おじ様は?」
侍女達が私を取り囲むように走る。私の手を引いていた侍女は、息を弾ませながら私を見下ろした。
「アリサ様の馬車と私達侍女の乗っている馬車のみ、強襲に合いました。馬車が持ちそうに無かったので、潰れる前に脱出した次第でございます。……国王陛下御一行は、その……」
言い淀んだ侍女からなんとなく察した。彼女が続けようとした言葉の続きを口にする。
「……先に、行ったのね?」
「…………は、い」
馬車から降りたのか、馬車が壊されたのか。
馬車から降りた途端、足元が泥だらけになる。大粒の水滴が頭を濡らす。それはこめかみを伝って、頬に滑り落ちた。
「こちらです」
侍女に手を引かれて走り出す。
向かう先は薄暗い森の中。天候も相まって、一層不気味に見える。
「み、みんなは?おじ様は?」
侍女達が私を取り囲むように走る。私の手を引いていた侍女は、息を弾ませながら私を見下ろした。
「アリサ様の馬車と私達侍女の乗っている馬車のみ、強襲に合いました。馬車が持ちそうに無かったので、潰れる前に脱出した次第でございます。……国王陛下御一行は、その……」
言い淀んだ侍女からなんとなく察した。彼女が続けようとした言葉の続きを口にする。
「……先に、行ったのね?」
「…………は、い」