この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
ほんの少し身長の高い少年と目を合わせて、お礼を言った。この場は無かったことになる。おじ様の口ぶりからして分かった。この機会を逃すと、彼には二度と会えなくなってしまう。本当は一言きりのお礼だけじゃ足りないものを、彼は助けてくれたのに。
私がおじ様の元へ戻ろうと、歩き出したのを彼は止めなかった。おじ様の元に来ると、おじ様は私を見下ろして一言だけ投げる。
「無事でよかった」
それがおじ様の本心だったかどうかは、分からない。
全く感情が伝わってこなかったから。
もう一度少年の方を振り向こうとしたけれど、護衛騎士達に遮られていて、姿を見ることは叶わなかった。
「おじ様。侍女達はどうしたの?」
「ああ。全員救出したよ」
「よかった……」
見上げると、私の目線より遥かに高い位置にあるアメジスト色の瞳が、冷ややかに私を映していた。
私がおじ様の元へ戻ろうと、歩き出したのを彼は止めなかった。おじ様の元に来ると、おじ様は私を見下ろして一言だけ投げる。
「無事でよかった」
それがおじ様の本心だったかどうかは、分からない。
全く感情が伝わってこなかったから。
もう一度少年の方を振り向こうとしたけれど、護衛騎士達に遮られていて、姿を見ることは叶わなかった。
「おじ様。侍女達はどうしたの?」
「ああ。全員救出したよ」
「よかった……」
見上げると、私の目線より遥かに高い位置にあるアメジスト色の瞳が、冷ややかに私を映していた。