この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
それから毎晩うなされた。
薄暗い雨の中をずっとさまよっている夢。走り続けて、走り続けて、そして突然男が現れる。私の手を掴むのだ。
ああ、今回も間に合わなかったと。
私は何度も何度も死ななければならないという暗示にかかる。貴族令嬢の矜恃を持って死ね、と。
おじ様は相変わらず何を考えているのか分からない。
私達が欺いている事をおじ様は知っているかもしれない、とルーカスには伝えている。けれど、おじ様が私に対してそれからリアクションを起こすことはなかった。それが一層不気味で、何を考えているか全く分からない。
元々強く思わなければ聞き取れない、欠陥だらけのような能力なのだ。それを充分に分かっているおじ様にとっては、対処は出来る話だった。
助けてくれた少年の事についてもルーカスには話した。きっとキルシュライト王国王太子、ローデリヒ・アロイス・キルシュライトだろうと教えてくれた。
見た目の年齢的にも合致する。おじ様もキルシュライトの王太子と言っていたし、少年の部下も彼の事を殿下と呼んでいた。
薄暗い雨の中をずっとさまよっている夢。走り続けて、走り続けて、そして突然男が現れる。私の手を掴むのだ。
ああ、今回も間に合わなかったと。
私は何度も何度も死ななければならないという暗示にかかる。貴族令嬢の矜恃を持って死ね、と。
おじ様は相変わらず何を考えているのか分からない。
私達が欺いている事をおじ様は知っているかもしれない、とルーカスには伝えている。けれど、おじ様が私に対してそれからリアクションを起こすことはなかった。それが一層不気味で、何を考えているか全く分からない。
元々強く思わなければ聞き取れない、欠陥だらけのような能力なのだ。それを充分に分かっているおじ様にとっては、対処は出来る話だった。
助けてくれた少年の事についてもルーカスには話した。きっとキルシュライト王国王太子、ローデリヒ・アロイス・キルシュライトだろうと教えてくれた。
見た目の年齢的にも合致する。おじ様もキルシュライトの王太子と言っていたし、少年の部下も彼の事を殿下と呼んでいた。