この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 利点の多い話に貴族はこぞって賛成した。むしろ反対する訳がなかった。ふしだらな女だろうが、国の為になれば万々歳。

 ほぼ一生出てこないような修道院に行くよりも、遥かに良い話だろう。人々は皆そう言った。

 私の能力を知る一部の人は勿論反対した。だが、反対すればするだけ知らない者の反発は強くなる。

 私の能力は貴重らしい。だが、悪用される可能性がある。だから迂闊に公表すれば、どうなるか未知数。私を連れて歩いていたおじ様は、間違いなく傾国の女に誑かされたと言われるだろう。

 キルシュライトの王太子も中々引き下がらなかった。噂は本当だから、と偽りを述べても「結婚前の火遊び位構わん」と一蹴する。元々おじ様が連れ回せる程、私が健康体である事は知られているので、どうにも手の打ちようがない。

 正直な所、隣国の問題のある公爵令嬢を娶るためだけに提示した条件としては破格の対価だった。
 ルーカスもティーナも何故そこまで、と驚く程だったのである。

 ついには病気になった事にでもしようか、と考え始めた辺りで、私の両親までもがこの縁談に賛成したのである。

 流石に実の親が賛同したとなっては、おじ様も面と向かってあまり反対は出来なくなってしまった。おじ様にずっと連れ回されて、ルーカスの婚約者に内定していた時期もあったけれど、親権は実の両親が持っている。
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