この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
結婚式の前日、その疑問をそのまま聞いたのだ。
すると彼は、表情を変えずに正直に言った。
「あの日見た可哀想な令嬢がずっと頭から離れられなかったからだ」――と。
同情なんていらなかった。
哀れみなんていらなかった。
それならば、修道院にそのまま行かせてくれれば良かったのだ。
この結婚は必ず破綻する。
貴族令嬢としての役割なんて到底担えそうにない私が、政略結婚なんて重荷を背負い続ける事が出来るとは思えない。
なぜなら私は――、男の人に恐怖を感じているから。
私の成人を待って、キルシュライト王城の教会で結婚式は執り行われた。両国の重鎮達が集まった。水面下で様々な思惑が蠢いているようだった。一部、私に筒抜けではあったけれど。
それを耳にしながら、私は結婚誓約書に自分の名前を記入する。
私の手が小刻みに震えて、文字が歪んでいた。
すると彼は、表情を変えずに正直に言った。
「あの日見た可哀想な令嬢がずっと頭から離れられなかったからだ」――と。
同情なんていらなかった。
哀れみなんていらなかった。
それならば、修道院にそのまま行かせてくれれば良かったのだ。
この結婚は必ず破綻する。
貴族令嬢としての役割なんて到底担えそうにない私が、政略結婚なんて重荷を背負い続ける事が出来るとは思えない。
なぜなら私は――、男の人に恐怖を感じているから。
私の成人を待って、キルシュライト王城の教会で結婚式は執り行われた。両国の重鎮達が集まった。水面下で様々な思惑が蠢いているようだった。一部、私に筒抜けではあったけれど。
それを耳にしながら、私は結婚誓約書に自分の名前を記入する。
私の手が小刻みに震えて、文字が歪んでいた。