この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 内心罪悪感を感じていると、ローデリヒ様がジギスムントさんに目配せして、部屋から出ていってもらっていた。ローちゃんはソファーでのんびりと寝ているけど、ローデリヒ様と二人きり。


「……それで、どうだったんだ?ルーカス・コスティ・アルヴォネンとティーナ・サネルマ・アルヴォネンは。思い出したんだろう?」

「ああ……、二人に関してはちゃんと思い出しました。幼馴染みですし……」

「貴女はきっと会いたくもなかっただろうが……」


 苦虫を噛み潰したようなローデリヒ様の反応に、私は目を瞬かせた。そういえば、ローデリヒ様が個人的にルーカスの事を好きじゃないって言ってたけど、なんで私もルーカスとティーナの事が嫌いって事になっているのだろうか?


「いや、別にルーカスとティーナに会いたくないって訳じゃないんですが……。仲良しの友達ですし」

「は?」

「え?」

 きょとんと見つめ合う。疑問符がお互いの間を行き来したが、ローデリヒ様が眉を寄せながら状況を整理しだした。

「根も葉もない噂を流された上に、決まっていた婚約を破棄され、女友達がその後釜に座り、貴女は修道院に行く羽目になったんだぞ?散々ではないのか?それなのに仲良し……?どういう事だ?」

「た、確かに……、実際に起こった事を並べると、完全に私を失脚させた極悪人みたいな感じになりますね……。ルーカスと婚約は元々嫌だったので、ラッキー位にしか思ってませんでした……」
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