この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
大国の王太子妃なのに、公務なんてほぼしていない。
ただ引きこもっているだけの生活。王城の敷地内の邸で、アーベルの面倒を見て、好きなだけ自分の時間を自由に使える。夫はどんなに遅くとも、毎日私達のいる邸へと帰ってくる。側室を取る気配すら見せない。
それがどれだけ難しい事か、私は知っている。
私に出来ることはほとんどない。社交界には怖気付いて出れない軟弱者。穏やかな生活で忘れかけていたけれど、私は未だに狙われ続けているらしい。
後悔の表情を浮かべたローデリヒ様にどう声をかけるか、散々悩み抜いた。
余計な事だと思わなかったと言えば嘘になる。
でも、彼の気遣いはこの二年と少しで十二分に知っていた。
ベッドの傍らに座るローデリヒ様の手に、自身のをそっと重ねる。ビクリ、と大袈裟なまでに彼の肩が跳ねた。
「余計な事……とは思いました。最初は。でも私、すごい恵まれてます。……だって、貴方が私の事をちゃんと気遣ってくれていて、アーベルも可愛がってくれている。私、きっとあのまま修道院に行っていれば、アーベルとも出会えなかったでしょうし」
ただ引きこもっているだけの生活。王城の敷地内の邸で、アーベルの面倒を見て、好きなだけ自分の時間を自由に使える。夫はどんなに遅くとも、毎日私達のいる邸へと帰ってくる。側室を取る気配すら見せない。
それがどれだけ難しい事か、私は知っている。
私に出来ることはほとんどない。社交界には怖気付いて出れない軟弱者。穏やかな生活で忘れかけていたけれど、私は未だに狙われ続けているらしい。
後悔の表情を浮かべたローデリヒ様にどう声をかけるか、散々悩み抜いた。
余計な事だと思わなかったと言えば嘘になる。
でも、彼の気遣いはこの二年と少しで十二分に知っていた。
ベッドの傍らに座るローデリヒ様の手に、自身のをそっと重ねる。ビクリ、と大袈裟なまでに彼の肩が跳ねた。
「余計な事……とは思いました。最初は。でも私、すごい恵まれてます。……だって、貴方が私の事をちゃんと気遣ってくれていて、アーベルも可愛がってくれている。私、きっとあのまま修道院に行っていれば、アーベルとも出会えなかったでしょうし」