この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 ルーカスとティーナの幼馴染みのアリサは活発な少女だった。だが、彼女自身が持つ魔法の属性により、次第に心を閉ざすようになってしまっていった。

 ルーカスとティーナはそれを歯がゆい思いで、傍で見ているしかなかった。
 ルーカスは自分の父親の暴走を止められることは出来なかったし、ルーカスと婚約するまでほぼ何も知らなかったティーナは無知だった過去の自身を恥じた。

 アリサがいた時も、ルーカスは水面下で動いていた。でも、やはり父親である国王を動かす事は出来なかったし、ルーカスが事態を察した頃には既に、国王はすっかり人間不信になっていた。

 それも実の息子の意見すら聞けないくらいには。

 勿論、それはアリサだけが悪いわけではない。
 処刑されたうち数人は既に国王を欺く計画も立てていたし、横領や賄賂は当たり前という裏の顔もあった。

 内心、前々から国王を舐めきっていた人間達なのである。事が明らかになったのがアリサの能力というだけで、自業自得ではある、とルーカスは非情だが思っている。
 敵に対してはとことん冷たくなれる性格だっだ。

 アリサは自らの業だと背負い続けているのだから、中々に難儀な性格をしている。諍いの芽を摘んでいたのは確かなのだから。正しい行いをしたとでも胸を張っていればいいのに。

 ……圧政に変わりはないが。
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