この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「こーら、アーベル。悪戯は駄目だ」


 イーナ様と私とで子供の悪戯に焦っていると、早朝ぶりのローデリヒ様が颯爽と現れて、アーベルの脇をくすぐる。

 ローデリヒ様は口元を緩ませて優しい声でアーベルを注意した。
 甲高い声で笑って身体をバタバタさせたアーベルは、あっさりとドレスから手を離す。その隙にサッとアーベルを抱き上げた。


「おはようアーベル。昨日はよく眠れたか?」

「とーたま!」

「そうか」


 通じているような、通じていないようなやり取りを交わし、ローデリヒ様はアーベルの額にキスをする。

 時間はもうお昼より少し前。
 私達とアーベルは一緒の部屋で寝ていないので、ローデリヒ様は今日初めて会う事になる。彼は執務があると、早朝に起きていた。

 ちなみに一緒に寝ているので、ローデリヒ様につられて私も起きました。

 それにしても……、全員が全員、ちゃんと怒ることが出来ていないような気がする。

 子供は褒めて伸ばしたいタイプなのだけれど、褒めすぎて我がままになっちゃったりしたら困るし……、うーん、難しい。
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