この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 前世の記憶しかなかった私もかなーり、アーベルの事を甘やかしまくっていたのは自覚している。だってアーベルは天使みたいだから仕方ない……、いや、天使なのだから仕方なくない?

 私のお腹で育って、死ぬかと思った位の痛みの末に生まれた子供が可愛くない訳ない。可愛くない訳がないけど、我がままな子に育ってしまうのも困る……。

 思考が堂々巡りになった。
 私の脳内会議は全く役に立たない。ローデリヒ様に相談してみようかな。

 みんなアーベルの事を可愛がってくれてるんだなって感じが伝わってくる。

 ローデリヒ様に付き従ってきたゼルマも、しわくちゃの顔を笑みでさらにシワシワにして、私達の様子を見守っていた。

 ……この人がローデリヒ様のお祖母さんか。

 キルシュライト王国の貴族名鑑にある程度の家系図は載っている。勿論、ローデリヒ様の両親も例外ではない。

 ローデリヒ様の父親は言うまでもなく国王様だし、母親は伯爵家の令嬢だと書いてあったけど……、あれは養女だったということなのかもしれない。本人の口からではなく、記録で知っていただけだった。
< 299 / 654 >

この作品をシェア

pagetop