この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「ええ、お陰様で。ピンピンしてるわ」


 ……今は悪阻でしんどいけどね。
 少しだけ顔色が悪いと思うけど、取り敢えず元気アピールはしておかないといけない。

 私の様子にティーナが感極まったようにプルプルと震える。手にハンカチを持ち、薄氷色の大きな瞳に涙を浮かべた。


「よ、良かったわ……!ずっと会えていなかったから、わたくし寂しくて寂しくて……。アリサったら婚約が決まって、ほとんどすぐに結婚してしまったんだもの……」

「うんうん」

「アリサは元気でいるのかしら?、といつも思っていたの。時々お手紙のやり取りはしていたけれど、ずっと心配していたのよ」


 ぐすっ、と鼻を啜ったティーナはハンカチで目元を拭った。
 ちなみに王族が出したり受け取ったりする手紙は、両方の国で検閲に掛けられる。検閲する人は顔も知らない文官らしいから、仮面夫婦やってました、なんて事は書けるわけがない。ルーカス達も当たり障りのない事しか書けない。

 ちなみに隣国なので、配達にすごく時間かかったりします。公的な文書なら早いんだけど、たぶん運ぶ人の負担が大きいそう。

 そんなわけで、誤解をしているとも、その誤解が継続されているとも思わなかった。文章だけのやり取りって情報量が少ないな……。
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