この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
でも、安定期まで公表はしたくなかったんじゃ……。
私の躊躇が伝わったのか、すやすやとお昼寝を始めたアーベルを抱っこしたままのローデリヒ様が口を開いた。
「実はアリサは二人目を妊娠していて、その悪阻が酷いのだ。奥方、妻が粗相をしてしまって本当にすまない」
「あ、なるほ……えっ?二人目ですって?!」
素直に頷きかけたティーナが目を剥く。ルーカスも予想外だったのか、前のめりになった。ちなみにティーナの大きな声でアーベルがうっすらと目を開ける。
「実はね。まだ妊娠初期なんだ。安定期になるまで公表はしないつもりだったんだけど……。ティーナ、本当にごめん。悪阻で匂いとかもダメで……」
まだまだぺったんこの下腹に手を置いてみせると、ティーナは困惑したような顔をした。
「でも、アリサは男の人が怖いのではなくて?」
「怖いよ。今でも正直苦手」
私は苦笑した。ローデリヒ様と初めて会った一件は、私の中でとても怖い事として位置付けられている。薄暗い森の中を追いかけられ続けたのは、恐怖でしかなかった。
でもね、と私は前の言葉を続ける。
「私、ローデリヒ様だけは慣れたいなって思ってる。私の唯一の夫で、アーベルの大事なお父さんでもあるから」
隣の人に顔を向けると、彼の海色の瞳が眩しいものを見るかのように細められる。口元が緩く弧を描いていた。
私の躊躇が伝わったのか、すやすやとお昼寝を始めたアーベルを抱っこしたままのローデリヒ様が口を開いた。
「実はアリサは二人目を妊娠していて、その悪阻が酷いのだ。奥方、妻が粗相をしてしまって本当にすまない」
「あ、なるほ……えっ?二人目ですって?!」
素直に頷きかけたティーナが目を剥く。ルーカスも予想外だったのか、前のめりになった。ちなみにティーナの大きな声でアーベルがうっすらと目を開ける。
「実はね。まだ妊娠初期なんだ。安定期になるまで公表はしないつもりだったんだけど……。ティーナ、本当にごめん。悪阻で匂いとかもダメで……」
まだまだぺったんこの下腹に手を置いてみせると、ティーナは困惑したような顔をした。
「でも、アリサは男の人が怖いのではなくて?」
「怖いよ。今でも正直苦手」
私は苦笑した。ローデリヒ様と初めて会った一件は、私の中でとても怖い事として位置付けられている。薄暗い森の中を追いかけられ続けたのは、恐怖でしかなかった。
でもね、と私は前の言葉を続ける。
「私、ローデリヒ様だけは慣れたいなって思ってる。私の唯一の夫で、アーベルの大事なお父さんでもあるから」
隣の人に顔を向けると、彼の海色の瞳が眩しいものを見るかのように細められる。口元が緩く弧を描いていた。