この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 アーベルは意外とティーナの事を気に入ったみたいで、腕の中に収まっていた。でもやはり居心地はあまり良くないのか、微妙な顔つきをしている。


「かわいい……」


 ティーナの薄氷色の瞳に暖かな光が宿る。口元はむず痒いような、嬉しいような、曖昧な弧を描いていた。
 ルーカスもその様子を微笑ましく眺め、ローデリヒ様も穏やかな表情を浮かべて見守っている。

 心の中が暖かいものでいっぱいになる。自然と顔が緩んでしまう。

 ああ、これが幸せってことなんだろうな。
 なんて、漠然と感じた。



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 それから程なくして、ルーカスとティーナは大幅に遅れてしまった新婚旅行の続きをする為に、海の方の観光地へと向かった。本当に嵐のような二人だった。
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