この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
(後編)夫婦とは――

恋愛結婚なんてしない。(ローデリヒ)

 恋愛結婚なんて絶対にしない(・・・・・・・・・・・・・)

 何故なら目の前で見てきたからだった。

 ――恋愛結婚の、悲惨な結末を。



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 ――一年前。

 気温はまだ低いが、時折吹く風がだいぶ暖かくなってきた。中天に昇る太陽がポカポカと地上を照らしている。

 比較的過ごしやすい気候になった、とローデリヒ・アロイス・キルシュライトは、中庭に面した廊下を歩きながら目を細めた。

 キルシュライト王国首都キルシュ。
 その中心に聳え立つ王城は、今日も絶えず人が出入りをしている。住み込みの使用人もいれば、王都の屋敷から通う大臣等の付き人まで。王城の政や厨房、騎士団等の一角は特に賑わいを見せている頃だろう。

 だが、ローデリヒはその喧騒から離れた一角にいた。
 コツコツと自身の革靴が廊下に響く。靴音はもう一つ。乳兄弟のイーヴォも付き従ってきた。
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