この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 しみじみと語る国王に、ローデリヒはおや、と目を瞬かせる。


「何も見えてないのは今もでは?主に体重の面においてですが」

「確かに太っちゃったけど、それ今関係なくない?!」


「全く……せっかくいい話をしてやろうと思っておったのにぶち壊しじゃ」と口を尖らせながら、水遣りを終えた国王は、枝切り鋏で植木の形を整える。ローデリヒの後に続いて、宮廷医師であるジギスムントも重々しく口を開いた。


「……いや、あんたのここ十年の体重の増加は健康に影響を及ぼす程だ。一国の主が自身の体重すらコントロール出来ないとは……嘆かわしい……」

「後半馬鹿にしてない?!酷いのう!!」


 わざとらしく胸をおさえて傷付いたポーズを取った国王だったが、誰も何も反応しなかったのでさり気なく胸から手を離す。


「……まあ、なんじゃ。嫁をもらってすぐに子供が出来たんじゃ。夫婦の時間もあまりなかったじゃろ?これから長い間時間を共にするのじゃから、仲良くするんじゃぞ。お主はただでさえアリサ以前に女性経験ないんじゃ」


 長々と話しを続けそうだった国王を、ローデリヒは容赦なくぶった切った。
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