この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「さて――、詳しく話を聞かせろ」


 ローデリヒ様は王太子の私室のソファで、ゆったりと足を組んだ。白い寝間着の上に暖かそうなガウンを羽織り、眉を寄せて難しそうな顔をしているものの、落ち着いているようにすら見える。

 さっき、とても高級そうな茶器セットを割っていた人とは思えない。

 王太子夫妻の寝室は陶器の破片が転がっているかもしれないという事で、私とローデリヒ様、謎の美少年と何故か着いてきた国王様の4人は場所を変える事にしたのだ。片付けは侍女達に任せてきた。

 私はローデリヒ様の隣にガウンやら毛布やらで、グルグル巻きにされて座っていた。ローデリヒ様は長丁場になると思ったらしい。妊婦は身体を冷やすなと、私の世話をする彼は、まるで口うるさい母親みたいだった。

 私達の向かいのソファに、謎の美少年は大人しく座っている。
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