この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「勿論、無条件で時空を行き来出来る訳ではありません。過去、あるいは未来の自分との入れ替わりという形で時空を移動しているので、自分の生きていない時代には行けません。そして、移動した時代に留まり続けられるのは1日のみ。それ以上の滞在は出来ません。あとは魔力の消費が激しすぎるなどといった制約は色々あります」

「そうか……、それもそうか。時空を移動出来るなんて、世界を大きく変えてしまうからな」


 納得したように頷いたローデリヒ様に続いて、私はアーベルに問い掛けた。


「……あの、つまり、話からすると、1歳のアーベルが16歳に急成長した訳じゃなくて、1歳のアーベルは15年後にいるってことだよね?」

「ええ。でも、母様のご心配には及びませんよ。能力を使う時は周囲に話してから使っているので、今頃未来の方で面倒を見てもらっているはずです」


 その言葉を聞いて少し胸を撫で下ろす。目の前にいるのは息子だと分かっているのに、急成長しすぎて頭がついていけていない。でも、何故か本能は納得している。不思議な感覚。


「ところで、未来から今日に移動してきた目的はなんだ?」


 あ。色々制約があっての上で時空を移動してきたのなら、今日に何か大事な目的があって来たと考えるのが自然か。

 ローデリヒ様の質問に、アーベルはちょっと気まずそうに頬をかいて苦笑いをする。
 そして、この騒動の原因をあっさり白状した。


「実は――、間違っちゃったんです。移動するはずだった日を」
< 344 / 654 >

この作品をシェア

pagetop