この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
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「……今日はまた、一段と酷い顔色してますね」


 王太子の私室まで迎えにきたイーヴォは、顔を合わせるなり呆れ半分で肩を竦めた。流石に寝不足で頭が重いことは自覚していたので、ローデリヒも反論はしない。目の下の隈も相まって、恐ろしく無愛想な顔になっていたが。


「……引越しまでに出来ることはやっておきたいからな。アリサの体調も今は安定しているとはいえ、出来るだけ調子の良い時に合わせておきたい」

「それで殿下がぶっ倒れてしまったら、元も子もないんじゃないですか?」

「今を乗り越えれば少しは休めるんだ。問題ない」


 大ありな顔してるじゃないですか、と文句を垂れ流しつつ、イーヴォはローデリヒに従った。離宮で家族でのんびり出来る時間を、ローデリヒが楽しみにしていることを知っているから。

 執務室に着くなり、昨日の続きから取り掛かった二人の元には、徐々に決裁の書類を持った文官達が集まってくる。王太子家族が離宮に行くだけであって、文官達は王城に残留予定であるが、それでも仕事には影響があるのだろう。文官達の顔も非常に疲れきっていた。
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