この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「側室をとる気は相変わらずないんですよね?」

「ああ、当たり前だ。子供が二人もいる。側室なんて不要だ」


 ローデリヒの返答にイーヴォは密かに安堵の息をついた。
 アリサとローデリヒかずっと仮面夫婦である事をイーヴォも心配していたのである。ローデリヒもアリサも、二人して夫婦の距離を縮めようとはしなかったし、ローデリヒ自身、結婚にそこまでの夢を抱いていなかった姿を見てきた。だが、ローデリヒは一応アリサの事を気にはかけていたし、やっぱり身近な人に幸せになってもらいたい、というのも自然な流れである。

 ローデリヒも夫婦間に距離があった事を反省していた。なにせ一国の王太子。相手から近付いて来る事はあっても、自分から歩み寄ることなんてした事がなかった訳で、――要するに人との関係構築は下手くそだった。

 アリサの性格が物静かでもなんでもなく、むしろほぼ真逆だったとは思わなかったが、元気そうなのでまあいいかという気持ちでいる。
 出来るだけ自身の妻と話す時間を設けてみると、親近感は湧いてくるし、彼女のまだまだ知らない一面を見たりして、意外と楽しかったのだ。

 それに、ローデリヒにはアリサと仲良くしておきたい理由(・・)があった。
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