この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「申し訳ございません。殿下が側室を持つ気がないのは存じ上げております。ですが、」


 文官は流石に言い淀んだ。ローデリヒも続く言葉は分かっている。


「宰相に逆らえなかった、か」

「申し訳ございません……」


 深々と頭を下げる文官を見て、ローデリヒはうんざりしたように息をついた。

 ――全く、仕事を増やすな。

 ここにはいない宰相に内心悪態をつき、文官には「追って沙汰を下す。それまでは自宅で休んでおけ」と命令した。罰と言っても、数日の自宅謹慎だろうが。

 文官を宮廷医と侍従に任せ、ローデリヒはイーヴォを連れて、国王の執務室へと足を向けた。
 勿論、この事態を作った当事者に直接問い詰める為に。



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