この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「で、殿下……?」
前触れもなくいきなり来たローデリヒに、執務室の前に立っていた騎士はギョッとしたような顔を向ける。
「宰相はいるか?」
「は、はい!しかし、陛下はおられません」
「陛下に用がある訳では無い。開けるぞ」
部屋の中にいる人の返事もそこそこに、ローデリヒは華美な装飾が施された取っ手に手をかけ、重厚な扉を開け放った。
「ちょ……、あれ?殿下?どうされました?」
いきなり室内に入ったローデリヒに目を丸くしたのは、丸眼鏡を掛けた冴えない中年男性。くせっ毛らしい金髪はあちこちに跳ねている。片手に束になった書類を持ち、利き手にペンを持って、書き物をしている最中だった事が誰の目にも明らかだった。
「釣書を私に見せてどうするつもりだった?」
釣書という言葉に、中年の男――ゲルストナーは事情を察したらしい。ずり落ちてくる眼鏡を上にあげ、「ははあ」とローデリヒが乗り込んできた理由に触れた。
前触れもなくいきなり来たローデリヒに、執務室の前に立っていた騎士はギョッとしたような顔を向ける。
「宰相はいるか?」
「は、はい!しかし、陛下はおられません」
「陛下に用がある訳では無い。開けるぞ」
部屋の中にいる人の返事もそこそこに、ローデリヒは華美な装飾が施された取っ手に手をかけ、重厚な扉を開け放った。
「ちょ……、あれ?殿下?どうされました?」
いきなり室内に入ったローデリヒに目を丸くしたのは、丸眼鏡を掛けた冴えない中年男性。くせっ毛らしい金髪はあちこちに跳ねている。片手に束になった書類を持ち、利き手にペンを持って、書き物をしている最中だった事が誰の目にも明らかだった。
「釣書を私に見せてどうするつもりだった?」
釣書という言葉に、中年の男――ゲルストナーは事情を察したらしい。ずり落ちてくる眼鏡を上にあげ、「ははあ」とローデリヒが乗り込んできた理由に触れた。