この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「その……、大変申し上げにくいのですが……、妃殿下の夜の営みの負担が大きすぎるのではないかと思いまして……、毎晩通われてますし、そんなに間を置かずに懐妊されていらっしゃいますし、寵愛されている事はわかりますが……」

「ゲホッ?!」
「ぶっふっ?!」


 ゲルストナーの勘違いに、ローデリヒは紅茶で噎せ、沈黙を守っていたイーヴォは耐えきれずに噴き出した。二人のリアクションに、「出過ぎた事を言いましたが……」とゲルストナーは非常に気まずそうに眼鏡を上げる。

 数度咳き込んだローデリヒは、ポケットからハンカチを出して口元を拭った。

 本当にゲルストナーは余計なお世話だが、まさかそういった事の回数が片手の指の本数の半分にも満たない事を言っても、信じてもらえそうにない。

 というか、自分の父親程の年齢の男に、正直に話せるはずもなかった。プライベートが過ぎる。

 ローデリヒは散々説明するか悩んだ末、切り札(・・・)を使った。
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