この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
じっと黙ったままのアーベルに我慢できなくなった男は、不機嫌そうに眉を寄せる。表情が忙しない男だった。
しかし、顔はアーベルの方を向いている。思いっきり目線も合っている。顔の角度を変えてみるが、男の目線もそれに合わせて動いていた。
無意識に唇を噛む。
ここまでの光属性魔法の使い手と出くわすのは、完全に想定外だった。懐にしまったままの短剣をいつでも抜けるように、手の位置を変える。
その瞬間、予備動作なしで男が動いた。
「ぐっ?!」
アーベルは反応出来ずに、殴られてやや後ろへと吹っ飛ぶ。途中で体勢を立て直したが、さすがに魔法の操作に対する集中力は切れた。今のアーベルは、誰の目にも認識出来る状態。
口の中に鉄の味が広がった。
アーベルはペロリ、と唇を舐める。
男のあまり筋肉がついていなさそうな体のどこから出ているのか分からない、重い拳だった。あまり力は入れているようには見えなかったのに。いよいよ不味くなった、と冷や汗をかく。
しかしそれ以上に相手の男の方が、アーベルの顔を見て、凄まじい衝撃を受けていた。隠しもせずに目と口を大きく開けている。
「お……お前……、まさか、陛下の隠し子?!」
「…………えっ?」
しかし、顔はアーベルの方を向いている。思いっきり目線も合っている。顔の角度を変えてみるが、男の目線もそれに合わせて動いていた。
無意識に唇を噛む。
ここまでの光属性魔法の使い手と出くわすのは、完全に想定外だった。懐にしまったままの短剣をいつでも抜けるように、手の位置を変える。
その瞬間、予備動作なしで男が動いた。
「ぐっ?!」
アーベルは反応出来ずに、殴られてやや後ろへと吹っ飛ぶ。途中で体勢を立て直したが、さすがに魔法の操作に対する集中力は切れた。今のアーベルは、誰の目にも認識出来る状態。
口の中に鉄の味が広がった。
アーベルはペロリ、と唇を舐める。
男のあまり筋肉がついていなさそうな体のどこから出ているのか分からない、重い拳だった。あまり力は入れているようには見えなかったのに。いよいよ不味くなった、と冷や汗をかく。
しかしそれ以上に相手の男の方が、アーベルの顔を見て、凄まじい衝撃を受けていた。隠しもせずに目と口を大きく開けている。
「お……お前……、まさか、陛下の隠し子?!」
「…………えっ?」