この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
かなりうろ覚えではあるが、アーベルのような見た目の侍従はいなかったはずだ。
「他にはいなかったの?」
「私達が見たのはご侍従だけです。他の者にも確認して参ります」
「ありがとう」
騎士の一人を残して、片方の騎士は走って行く。だが、私達の目に届く範囲に持ち場として元々いた二人組の騎士の片方が、少しばかりこちらに寄ってきた。よく訓練されている。
でも、二時間前なら私が話し掛けた二人組は、アーベルの事を見ていないという事になる。というか、お手洗いの近くで掃除をしていた女官三人に少年を見たか聞いたんだけど、見ていないらしい。彼女も一時間半ほどお手洗い近くで掃除をしていたけど、少年どころか誰も通っていないのだと。
その時はアーベルが完全に迷ってしまったのだと思った。迷っても、どこかで誰かが姿を見ているはずだと楽観視してしまっていた。
――戻ってきた騎士が、ここら辺の持ち場の騎士だけでなく、現在休憩している全ての王城を警備する騎士がアーベルの姿を見ていないと聞くまでは。
ローデリヒ様は王太子の執務室におらず、また、アーベルも王太子の執務室には訪れていないらしい。ローデリヒ様が国王様の執務室に向かったと聞いて、国王様はさっきまでお茶会をしていたはずだけど……、と思いながら足を進める。
だけど、それよりも誰もアーベルの姿を見ていない事が不安で不安で仕方なかった。
「他にはいなかったの?」
「私達が見たのはご侍従だけです。他の者にも確認して参ります」
「ありがとう」
騎士の一人を残して、片方の騎士は走って行く。だが、私達の目に届く範囲に持ち場として元々いた二人組の騎士の片方が、少しばかりこちらに寄ってきた。よく訓練されている。
でも、二時間前なら私が話し掛けた二人組は、アーベルの事を見ていないという事になる。というか、お手洗いの近くで掃除をしていた女官三人に少年を見たか聞いたんだけど、見ていないらしい。彼女も一時間半ほどお手洗い近くで掃除をしていたけど、少年どころか誰も通っていないのだと。
その時はアーベルが完全に迷ってしまったのだと思った。迷っても、どこかで誰かが姿を見ているはずだと楽観視してしまっていた。
――戻ってきた騎士が、ここら辺の持ち場の騎士だけでなく、現在休憩している全ての王城を警備する騎士がアーベルの姿を見ていないと聞くまでは。
ローデリヒ様は王太子の執務室におらず、また、アーベルも王太子の執務室には訪れていないらしい。ローデリヒ様が国王様の執務室に向かったと聞いて、国王様はさっきまでお茶会をしていたはずだけど……、と思いながら足を進める。
だけど、それよりも誰もアーベルの姿を見ていない事が不安で不安で仕方なかった。