この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 普通の能力、なんだけど、光の英雄と全く同じ能力なんだって。

 同じ光属性魔法でも、国王様に使えてローデリヒ様に使えない魔法があったりするらしくて……この辺りは、私は詳しく学んでいないから分からないや。

 私の能力なんて、使おうと思って使うんじゃなくて、自動的に発動するようなものだし。

 国王様は若い時は本当に凄かったと時々聞くけど、私は誇張なんじゃないかと思っている。だって、今日なんてマカロン食べてただけだったし。

 でも、この側室達の話を聞いていると、国王様の事を本当に凄い人と思っているらしかった。


「だからね、ヴァーレリー様。きっと今は不安でも、慣れるはずよ。陛下はお優しいもの」


 ハイデマリー様が赤いルージュの引かれた唇を上げる。ゾッとする程の美しい微笑みと共に告げられた言葉に、参加者達は一斉に私を見た。
 ……急に振らないでほしかったかな。


「……ありがとうございます、ハイデマリー様。ハイデマリー様に仰っていただけると心強いですわ」


 アドリブに慣れていて良かったと思った。慣れた経緯はあんまり良い事ではなかったけれど。
 じっくり私を見ていた参加者の一人が、口元に手を当てながら小首を傾げる。自らの可愛らしさを充分に熟知した動きだった。


「ところで、ヴァーレリー様はまるで伝え聞く王太子妃殿下と同じ色彩ね……」
< 393 / 654 >

この作品をシェア

pagetop