この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
光の王子様。(他)
王城の廊下を軽やかに、しかし、重そうな音をたてながら国王――ディートヘルム・エリーアス・キルシュライトは走っていた。やや難しい顔つきで、思い当たる所へと向かう。
「一時間……何かあったとみて間違いはないじゃろ……」
駆けてはいるが、王城は広い。王族の私的な空間から目的地である公的空間へは、決して近くはない。だから、長くて三十分くらいは掛かると見込んでいた。だが、予想以上に時間は過ぎている。面倒な事になっているかもしれない。
気が早った国王は、このまま長い廊下を走るよりも、一刻も早く現場に到着したかった。
そして小さく呟く。
「《光迅速》」
国王の姿が、輪郭が、光で覆われる。
次の瞬間――、
「ぶっふぅ?!」
廊下の行き止まりに顔面から突っ込んで、数回バウンドしながら床を転げた。
先程まで国王がいた私的空間の廊下から、随分離れた公的空間まで一気に通り抜けたはいいが。
「……まずい。ワシ、魔法の腕が落ちとるのう……」
キルシュライト王国で一番の魔法使いは、鼻血を出しながら遠い目になった。
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「一時間……何かあったとみて間違いはないじゃろ……」
駆けてはいるが、王城は広い。王族の私的な空間から目的地である公的空間へは、決して近くはない。だから、長くて三十分くらいは掛かると見込んでいた。だが、予想以上に時間は過ぎている。面倒な事になっているかもしれない。
気が早った国王は、このまま長い廊下を走るよりも、一刻も早く現場に到着したかった。
そして小さく呟く。
「《光迅速》」
国王の姿が、輪郭が、光で覆われる。
次の瞬間――、
「ぶっふぅ?!」
廊下の行き止まりに顔面から突っ込んで、数回バウンドしながら床を転げた。
先程まで国王がいた私的空間の廊下から、随分離れた公的空間まで一気に通り抜けたはいいが。
「……まずい。ワシ、魔法の腕が落ちとるのう……」
キルシュライト王国で一番の魔法使いは、鼻血を出しながら遠い目になった。
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