この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
一体何を入れたんだろう……?と思って目を凝らそうとして――、我に返った。
「――?、ヴァーレリー?」
「は、はいっ」
いつの間にかハイデマリー様が私のことを呼んでいたらしい。ヴァーレリーちゃんの名前勝手に使ってたから、反応に遅れてしまった。お茶会の参加者全員が私を見ている。
「ヴァーレリー?どうしたのかしら?」
「いいえ、何もございません」
「そう……。それならばいいわ。それにしても……、貴女、随分と紅茶を飲んでいないようだけれど、どうかしたのかしら?」
ハイデマリー様が小さく首を傾げる。純粋に、不思議そうに。艶めいた外見をしているはずなのに、まるで少女のようだった。それが一層不気味で。
目線を落とすと、手元のカップが目に入る。中の紅茶派注がれた時とまんま変わらない水位を保っていた。
当たり前だ。
飲んだフリをしていたのだから。
「そんな事ありませんよ」
ニコリ、と笑顔を見せると、ハイデマリー様は花が咲くようにふんわりと微笑んだ。
「よかったわ。今日はこの日の為にお取り寄せした、わたくしの大好きなお茶ですの。皆様に飲んでいただきたくて振舞ったのですけれど、ヴァーレリーのお口に合わなかったら、どうしようかしらと思ってしまって……」
「――?、ヴァーレリー?」
「は、はいっ」
いつの間にかハイデマリー様が私のことを呼んでいたらしい。ヴァーレリーちゃんの名前勝手に使ってたから、反応に遅れてしまった。お茶会の参加者全員が私を見ている。
「ヴァーレリー?どうしたのかしら?」
「いいえ、何もございません」
「そう……。それならばいいわ。それにしても……、貴女、随分と紅茶を飲んでいないようだけれど、どうかしたのかしら?」
ハイデマリー様が小さく首を傾げる。純粋に、不思議そうに。艶めいた外見をしているはずなのに、まるで少女のようだった。それが一層不気味で。
目線を落とすと、手元のカップが目に入る。中の紅茶派注がれた時とまんま変わらない水位を保っていた。
当たり前だ。
飲んだフリをしていたのだから。
「そんな事ありませんよ」
ニコリ、と笑顔を見せると、ハイデマリー様は花が咲くようにふんわりと微笑んだ。
「よかったわ。今日はこの日の為にお取り寄せした、わたくしの大好きなお茶ですの。皆様に飲んでいただきたくて振舞ったのですけれど、ヴァーレリーのお口に合わなかったら、どうしようかしらと思ってしまって……」