この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 そ、相当な役者だ……!!

 でも、私はローデリヒ様の事を貶めようとしているのが気になっただけで、自分の生活なんて考えていなかった。そういえば、ローデリヒ様が失脚したら私も茨の道を歩く事になってしまうし、最悪殺されてしまう。



 ――王太子妃様が人の心を読める、というのは本当なようね。強く思えば伝わる、だなんてわたくし全く信じていなかったわ。引っ掛かるなんて思ってもみなかったのよ。



 尚もハイデマリー様はどこか上機嫌に私の頭の中に語り掛け続ける。
 なんで、私が王太子妃だとバレたのか、なんでお茶会にまで連れて来たのか、なんで私を騙したのか、そんな疑問が浮かんでくる。

 けど、それよりも、

 なんで私の能力を知っているんだろう――?



 ――それで?わたくしの侍女が淹れたお茶はどうされるの?



 ハイデマリー様に誘導されるように、私はティーカップを持ち上げた。手先が小さく震える。けど、それを無理矢理抑え込む。

 役者的には、どうやらあちらの方が上手だったみたい。

 本気で後悔した。ローデリヒ様の言う通り、さっさと帰ればよかった、なんて。

 結局私は――、約立たずなんだろうか。
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