この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 やはり何か察しているのだろうな、と内心思いながら頷いた。
 国王にしては、ここ最近では珍しいくらいの真剣さだった。何か予感めいたものはローデリヒも時々感じるが、国王も同じらしい。百発百中で嫌な予感が当たると言われているが、アーベルに時空属性が現れているので、もしかしたら先祖に時空属性持ちがいて、ローデリヒ達にも少しは影響しているのかもしれなかった。

 自分の私室で、機密事項が山ほどある部屋の見張りをヴァーレリーとエーレンフリートに任せ、ローデリヒは退出する。

 アリサを探す為に使い魔との視界を繋げて――、心臓が一瞬止まった。

 側頭部を複雑に結い上げ、派手なワインレッドのドレスを着た女が妖艶に微笑んでいる。何より目がいくのは赤い口紅が塗られた口元だった。

 何故、この女が使い魔の視界に入るような場所いるのか。

 見た目は二十代だが、その実ローデリヒが幼い頃より容姿が変わっていない女である。気位の高い女で、元々の出身の家もそれなりに身分の高い家であった。昔ならば下賜先は幾らでもあったというのに、王妃という地位にこだわり続け、今でも後宮に居座っている。もはや主であった。

 そしてローデリヒは、このハイデマリーがものすごく苦手であった。まず己の父親の側室は全員苦手ではあるのだが。
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