この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
お悩み相談室。(他)
急に手元が暗くなった。影だ。
「やはりお主が持っておったか――アーベル」
頭上から落ちてきた声に、驚きで目を開く。背後を音もなくとったその人を、アーベルは仰ぐように見た。
「お祖父様……」
「エーレンフリートは何も持っておらんかったからの。自然とお主を疑うことになった」
アーベルの手の中にある紙を見ながら、国王は隣の席に座る。アーベルも国王から視線を外し、手元へと落とした。
「離宮行き、そこで何かが起こるのか?」
アーベルは無言を貫いた。国王もそれを分かっていたのか、追及はしない。だが、深々と息を吐いた。
「……取り敢えず、アリサとローデリヒには謝っておけ。随分と心配しておった」
物陰から白い尻尾が見える。長毛種特有の長い毛がひょんひょんと揺れていた。不細工なデブ猫が聞き耳でもたてているのだろう。
「お主が具体的に話せないのも、未来が大幅に変わってしまうことを恐れたのも、理解は出来るのじゃ。だが、このような形で知られてよかったのか?離宮行きで何かが起こると、示してよかったのか?」
「やはりお主が持っておったか――アーベル」
頭上から落ちてきた声に、驚きで目を開く。背後を音もなくとったその人を、アーベルは仰ぐように見た。
「お祖父様……」
「エーレンフリートは何も持っておらんかったからの。自然とお主を疑うことになった」
アーベルの手の中にある紙を見ながら、国王は隣の席に座る。アーベルも国王から視線を外し、手元へと落とした。
「離宮行き、そこで何かが起こるのか?」
アーベルは無言を貫いた。国王もそれを分かっていたのか、追及はしない。だが、深々と息を吐いた。
「……取り敢えず、アリサとローデリヒには謝っておけ。随分と心配しておった」
物陰から白い尻尾が見える。長毛種特有の長い毛がひょんひょんと揺れていた。不細工なデブ猫が聞き耳でもたてているのだろう。
「お主が具体的に話せないのも、未来が大幅に変わってしまうことを恐れたのも、理解は出来るのじゃ。だが、このような形で知られてよかったのか?離宮行きで何かが起こると、示してよかったのか?」