この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 ニコニコと上機嫌に微笑むイーナさんが、ヴァーレリーちゃんの両肩を持つ。ヴァーレリーちゃんはウブな乙女(・・・・・)というワードが気に食わなかったのか、指の隙間から物言いたげな目をイーナさんに向けた。イーナさんは思いっきりスルーしてたけど。


「奥方様。反射的に殴ってしまう事に対する解決策があります」

「え、なになに?!」


 ずいっと身を乗り出してくるイーナさんに、私も前のめりになる。イーナさんはゾッとするような妖艶な笑みをみせた。


「奥方様から殿下に触るのです。親しい女性から触られて嫌になる殿方はほとんどおりませんし……」

「なるほど!その手があった!」





 そして、夜。

 何が、「その手があった!」だよ。普段私からローデリヒ様に触らない上に、ローデリヒ様と身体的接触なんて指が当たったくらいが日常なんだよ。キスも全然しないし。

 イーナさんからの解決策もらったけど、これ役立てないやつじゃない?

 今日もアーベルが夜泣きしてしまったけど、流石に寝不足が続いてしまっているからか、イーナさんが面倒を見てくれている。そう、今日はゆっくり休める日だった。

 ……のに、イーナさんのお陰で全然眠れない所か、目が冴え渡っている。流石イーナさん……国王様の側室やっていた事はある……。
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