この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 寝れなくてモゾモゾと寝返りをうっていると、音もなくローデリヒ様が部屋に入ってきた。今日も深夜。
 やっぱり王太子は忙しいらしい。


「起きているのか?」

「……う……、はい」


 昼間に話したことが頭をよぎって、それが気まずくて狸寝入りしようとしてたのに、一発でバレた。
 ゆっくり布団の中に入ってきて、隣で寝転んだローデリヒ様は、ポツリと言った。


「すまなかった」

「……ん?」


 いきなり謝られる理由が分からなくて、隣を向いた。ベッドの天蓋を眺めるローデリヒ様の横顔を見つめる。


「その……キスした時、いきなり耳を触って……」

「えっ、あ、……むしろこちらこそごめんなさい……。急に殴ってしまって……」

「いや、いい。触れられて嫌だったのだろう?」

「嫌……とは?」


 私が男の人に対しての拒絶反応は知っているはずなのに、今更どうしたんだろう?と内心首を捻る。


「あれからずっと、私に対して何かぎこちない気がしてな……」


 ずっとモヤモヤしてたのバレてたのか……。
 流石にこのままでは不味いと思って、私は上体を起こす。ローデリヒ様は寝転んだまま私を見上げた。
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